境港の怪談師・神原リカ氏降臨。

令和元年7月21日。梅雨のなか、唯一晴れた日曜日。
「こんにちは~神原です~」
米子訛りの明るい声を響かせてお店に入ってくる神原氏。腰ほどの長さのある黒い髪。それが彼女の怪談師としての一面をちらりと覗かせているかのよう。このイベントを企画した私自身、少しの緊張といっぱいの期待で自分の心臓の鼓動が耳の中から聞こえてきます。

テーブルには小泉八雲ゆかりのお酒。

15時。お客様が続々と入ってきました。明かりを落とした店内には、不気味な音楽が流れ、ナニかが始まってしまうかのような不穏な空気。テーブルには古めかしいこけしが並び、暗い中ではこけし達がなんだかにんまり嗤っているようにも見えます。ドリンクにはあの小泉八雲も飲んだという、隠岐酒造の「江戸の純米酒 90」も。ちなみに小泉八雲はこのお酒をこのように評しています。
「日本食と良く合い、色はレモネードのようで、シェリー酒のように強いが、酔い心地が良くて、翌日残らない」
山陰いいもの探検隊 探県記Vol.24より引用
こちらは江戸時代のお酒を復元したものです。

怪演!想像力を掻き立てる土着の怖い話。

15時半を過ぎた頃。ふいに照明が落ち、会場も一瞬しんと静まりました。相変わらず流れ続ける不気味な音楽。何処からともなく神原リカ氏の声が聞こえてきて、会場の雰囲気がどんよりとしてきたのがわかります。前説が終わると、前の扉か出てくるのかと思いきや、真ん中の扉から白い装束に身を包み、狐の面をつけた怪談師・神原リカ氏が登場。初めはインタビューでもお話してくださった、不思議なモノが見えるというおばあさまのお話。彼女の米子訛りの鳥取弁がわたしたちの想像力を掻き立て、ある種の土着的な怖さを感じさせます。それからは鳥取市、大山、米子、安来、松江に纏わる怪談を話しながら、だんだんと鳥取県から島根県へと。その場所へ行ったことのある人はもちろん、行ったことのない人でもその場所の情景が浮かび、怪談話へと引き込まれていきます。神原リカ氏の後ろから客席の様子を見ていると、怪談話の抑揚に恐怖で目を見開く様子や、ビクッと肩が跳ねるお客様がチラホラと。(お客さまが怖がっている様子がたまりません・・・)

小泉八雲の『幽霊滝』。

基本的に怪談話は会場にイベントに来られた方だけの「秘密」ですが、ひとつだけ、会場で語っていただいた、小泉八雲の『幽霊滝』をご紹介します。
〜小泉八雲の幽霊滝のお話〜
伯耆の国、黒坂村の近くに「幽霊滝」と呼ばれる滝がある。滝壷の近くに、氏神をまつった小さな社があり、土地の人たちは滝大名神と名づけている。そして、社の前に、信者の賽銭を入れる小さな木の箱がある。その賽銭箱について、こんな物語がある。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~中略~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある底冷えのする冬の晩、黒坂のとある麻とり場に雇われている女房たちが集まって怪談にうち興じた。すると一人の娘が「今夜、あの幽霊滝へだれかがひとりで行くことにしたら!」と大声で叫んだ。この思いつきに、みんなはわっと声を上げたが、たちまち興奮した笑い声に包まれた。「行った人に、あたし、今日とった麻を全部あげる!」となかの一人が、茶化すようにいった。「わたしもあげる」と、もう一人が大声でいった。「わたしも」と、つづいて声があがった。「みんな、さんせい」とさらに一人が言いはなった。すると、麻とり女のなかから、安本お勝という大工の女房が立ち上がった。女は、二歳になるひとり息子を暖かそうにくるんで、背中に寝かしつけていた。「みなさん」とお勝はいった、「ほんとに、今日とった麻をみんなわたしに下さるなら、幽霊滝に行ってきますよ」彼女のこの申し出は、驚きと無視でむかえられた。しかし、何度も繰りかえすので、とうとうみんな本気になった。麻とり女たちは次々と、もしお勝が幽霊滝へ行くなら、その日とった分を与えることに同意した。「でも、ほんとにそこへ行ったか、どうしてわかるの」誰かが鋭い声で訊ねた。「では、お賽銭箱を取ってきてもらいましょうよ」と麻とり女たちから「おばあさん」と呼ばれている老女が答えた。「持ってきますとも」と、お勝は叫んだ。そして、眠った児をおぶったまま、表へとび出した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~中略~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
人通りのない道をお勝はいそいだ。やがて、滝の低い響きが聞こえてきた。前方に、一面の暗闇のなかから、長く鈍く光る滝の流れが、ぼんやり現れてきた。ほのかに、社が、賽銭箱が、見えた。彼女は、駆けよって、手をかけた。
「おい!お勝さん!」突然、滝の砕ける音を圧していましめる声が聞こえた。お勝は、恐怖に気を失いかけて-----―立ちすくんだ。
「おい!お勝さん!」またもや、声がひびいた-------―こんどは、もっとおどすような口調であった。しかし、お勝は実に大胆な女であった。すぐに気をとりなおすと、賽銭箱をひっつかんで、走り出した。
お勝が、息を切らし、賽銭箱をかかえてはいってきたとき、女房や娘たちは、どんなに驚きの声をあげただろう!
おばあさんは、子供をくるんであるねんねこを解くのを手伝いながらいった-----―「まあ背中がぐっしょり!」それから、かすれた声で悲鳴をあげた、「あッ!血だ!」
そして、解いたねんねこから床に落ちたものは、血にしみた子供の着物から突き出た、非常に小さな二本の褐色の脚と、非常に小さな二本の褐色の手-----―ただ、それだけであった。
子供の首は、むしり取られていたのである!
<小泉八雲著 上田和夫訳 『小泉八雲集』新潮文庫 昭和五十年 P.100~P.103 「幽霊滝の伝説」より引用>

神原氏はこれを語ったあと、実際にこの「幽霊滝」が伝わっている滝山神社のお話をしてくれました。この神社では今でも2歳になるまで子供を連れていってはいけない、という言い伝えがあるそうです。それはもちろん生まれる前の胎児も含んでおり、その言い伝えを信じなかった妊婦がお参りに行き、赤ちゃんが生まれるときにイロイロあった、という話も。この伝説がただの言い伝えではなく、現在も続いているということに、個人的に恐ろしさを感じました。

目で見て、耳で怪談を聴く。

目で見て、耳で怪談を聴く。そして舌で山陰の美食を味わい、鼻でその香りを感じ、食材の感触を確かめる。見て聴いたことが脳裏に浮かび、心で怖さを感じる。まさに五感ならぬ六感を使っての怪談ライブになったのではないかと、個人的には思うのです。

店舗情報 山陰・隠岐の島ワールド

5つの漁港で水揚げされた鮮魚を毎日直送!「境港・海士町・浜田・賀露・香住」でとれる旬の魚介を刺身盛りや浜焼きでご提供。地元でしか食べられない珍魚や大山鶏、豊富な地酒もご用意しています。

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